経営業務の管理責任者でやってはいけないダメな方法。
この記事は常勤役員等(経管)などで名義貸しだダメな理由やリスクについてご紹介します。
名義貸しで経管を用意するのは絶対にしてはいけないことを説明した4コマ漫画。
経営業務の管理責任者(経管)は、大阪府の建設業許可申請で一番難しい所です。
行政書士やまだ事務所にも、建設業で独立したから許可を取りたいとお問い合わせがあります。
お電話で話をお聞きすると…
常勤役員等の要件を満たせない事が多いです。
新規のご相談で、建設業許可が取れない理由ナンバーワンは経管がいない事です。
常勤役員等(経管)の要件は、原則的には建設会社の役員経験か個人事業主など経営経験が必要です。
常勤役員等は専任技術者のように国家資格でなれない資格です。
経管は5年の経営経験が無いと実質的にはなれません。
令和2年の法改正で要件が緩和されましたが、5年の役員経験が一番楽に証明できます。
経営経験を証明するには、会社の登記簿、確定申告書、請求書のコピーなどが必要です。
または過去に許可を持っていた会社の申請書など。
建設業で独立する人で、元役員のキャリアがある人は多くありません。
建設会社や個人事業で社員として修行して、現場の仕事を覚えて独立する方が多いです。
建設業の経営をスタートしたばかりで、これから頑張って行こうとする方です。
個人的には何とかして差し上げたい気持ちで一杯ですが…
要件を満たすまで待つか、外部から役員を招聘するかになります。
今度は建設会社の役員だった人の場合です。
役員経験が、自社か他社であるかで難易度が天と地ほどに違います。
当然ながら自社の経験で常勤役員等を狙う方がシンプルです。
この場合は自社にある書類だけで証明が終わります。
逆に他社(元勤務先)証明は、作業量を含め難易度が各段にあがります。
前職の職場から、確定申告書のコピーや請求書の写しを5年分貰う必要があります。
多くの場合で前の会社から協力してもらえない事が多いです。
建設業で独立する場合、元勤務先と同じエリア、同じ業種で営業することが多いです。
前の会社にとっては、将来のライバルに塩を送りたい人は少ないです。
他社証明で元勤務先から書類を貰えない場合の対処法も存在しますが…
事前に交渉なしで大阪府庁に、いきなり提出しても受理されない可能性が高いです。
自社に建設業の役員経験者がいない場合の対処方法は2種類あります。
どちらを選んでもメリットとデメリットが存在します。
それを選ぶのは申請者である貴方自身です。
こちらは独立後、無許可業者として5年間仕事を頑張る方法です。
許可が無くても500万円未満の軽微な工事は受注することができます。
関連記事:請求書を分割すれば500万を超える工事も受注できる?
5年後に許可を取る場合、自社証明だけで済むので書類集めが比較的楽になります。
許可取得の協力の為に元勤務先に頭を下げる必要もありません。
最大のメリットは、外部の人間に経営を振り回されない事です。
他社の役員経験者を入れる方法を使うと、最速で建設業許可が取れます。
そして5年後に経管を常勤役員等を交代する形です。
この方法ですが…
想像以上にシンドイやり方になります。
常勤役員等という許可の根幹を他者に委ねることになります。
実質的な共同経営です。
役員経験者の人柄や関係性もありますが、高確率で振り回されます。
何らかのトラブルで迎え入れた人が退職する可能性もあります。
経管が1日でも居なくなれば、許可が取消になります。
社長が常勤役員等(経管)と専任技術者を兼ねるのが安全で確実です。
次は社長が要件を満たすまで待つ場合のデメリット。
一番大きいのは500万円未満の軽微な工事しか出来ない事です。
取引先や施主様から500万円以上の工事オファーが来た場合、許可が無いと受注できません。
請求書を分割するなどで対応したくなりますが、発覚した時は許可申請でマイナスに作用します。
将来的に公共工事の受注を目指す場合、許可業者としての営業年数が評価の対象になります。
5年後に許可を取る場合には、5年分の実績がカウントされません。
公共工事主体でビジネス展開を考える場合にはデメリットです。
次は知り合いの会社など外部から役員経験者を自社に入れる方法です。
少しでも早く建設業許可を取得したい場合には有効な方法です。
5年後の許可の更新時に、常勤役員等の変更届を一緒に行う形です。
この方法にもメリットとデメリットがあります。
上記の5年待つ場合の逆になります。
まずは外部から経管をスカウトするメリットです。
一番大きいのは、独立後すぐに建設業許可を取る事が可能です。
自社のリソースだけなら、許可が取れずに500万円以上の工事を失注しますが、許可があるので問題なく仕事を取ることが出来ます。
また建設業者としての実績を積むことが可能です。
特に公共工事の元請を希望する場合、営業年数の長さが評価のポイントになります。
次は経管人材をスカウトするときのデメリット。
まず最初のデメリットです。
常勤役員等になれるスペックの人材を見つけるのが大変な事です。
昨今は建設業界は人手不足と求人環境は非常に厳しいものがあります。
経管は役員経験者を役員待遇で雇用するので、ハローワークや求人サイトで簡単に見つかるものでも無いです。
弊所が見聞きした場合ですと、知り合いの会社から紹介してもらう。
もしくは家族や親戚で役員経験者がいる場合は、自分の会社に入って貰う。
同業者の紹介か親族関係ルートで経管を準備する方が多かったです。
経管で迎え入れる為には、役員もしくは支配人(個人事業主)待遇での雇用になります。
一般の社員さんよりも報酬額などポジションが異なります。
何方かと言うと従業員ではなく、共同経営者に近い関係になると思います。
他者を雇用する以上、退職や退任のリスクが付きまといます。
退職する理由は色々ありますが、突然に居なくなってしまうと…
常勤役員等が不在になり、許可が維持できなくなるケースも。
どうしても早急に許可が必要、だけど自社にも知り合いや家族にも役員経験者が居ない。
そんな時に名義貸しが頭の片隅によぎると思います。
だけど名義貸しは絶対にダメです。
大阪府建築振興課は常勤役員等と専任技術者の名義貸しを認めていません。
申請者が名義貸しで許可を取らないか、複数の審査項目でチェックを入れています。
大阪府の場合は業務委託の人ではなく、本職が念入りにチェックします。
たとえ許可取得後に、名義貸しが発覚して許可取り消し処分になるリスク。
名義貸しが発覚した場合ですが、虚偽申請になります。
虚偽申請は許可の欠格要件に該当して取り消し処分が下されます。
こうなると5年間は許可を取ることができなくなります。
またその会社に所属していた全役員も同様に5年間は許可が取れなくなってしまいます。
さらに罰金や懲役刑なども科されるリスクがあります。
特に仕事が回り出してからの許可取り消しは目も当てられないです。
お客様や取引先などの関係者に、虚偽申請で許可が無くなりましたと言えますか?
名義貸しは取り消し処分など大きなリスクがあります。
常に怯えながら仕事をする事になります。
また名義貸しをした人にも大きな弱みを握られてしまいます。
ビクビクしながら生活をするのは非常にストレスが溜まります。
ストレスが原因で体を壊したり、思わぬ事故に繋がったりと碌なことがありません。
そんな思いをするくらいなら、社長が常勤役員等の要件を満たすまで待つ方が楽です。
自分に疚しいことがなければ、堂々と仕事をすることができます。
隠し事をしながら仕事をするのは、ストレスもリスクもあり過ぎます。
4コマ漫画でご紹介するように、突然の退職で技術者が居なくなった場合でも、名義貸しを考えてしまうかもしれません。
しかし名義貸しは百害あって一利なしの最悪の手段です。
専任技術者が急に居なくなった場合についての記事はこちらから。
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