この記事は5期分まとめて決算変更届(決変)を出すことについて.
決変5期分一気に提出することにはリスクがあります.
毎年キチンと出すことを強くお勧めします.
5期分を放置して許可を飛ばしかけた会社を見てきた経験からも.
本来,決算変更届は会社の決算が閉じた後の4か月以内に提出が義務です.
しかしながら色々な事情で提出できていないこともあります.
この届が提出されていないと…
建設業許可の更新や業種追加が行えません.
更新申請をする前に未提出の決変を提出する必要があります.
中には5期分をまとめて提出することもあります.
正確には5期分の決算変更届と更新申請を同時に行う形です.
決算変更届を複数年分まとめて出すと,建設業課の担当官から行政指導を受けます.
申請書の提出時に提出に出向いた人が個室に呼ばれて,そこでお叱りと指導を受けることに.
その時に上記のような文書が手渡されます.
この書類は複数回,まとめて出した業者に渡されるものです.
建設業法的には期限内に変更届を出さない場合,ペナルティが科せられます.
根拠は建設業法28条にあります.
条文が長いので関係する部分だけを説明すると,以下の様になります.
営業停止処分を受けた場合,事実を公表されます.
すぐに営業停止処分にはならないかもですが…
実態は泳がされているだけです.
何か別の違反があって単体の違反だけでは弱い時,届け出義務違反も一緒に出してきて処分を下すことに.
決算変更届は提出された後,ファイルに綴じられ閲覧が可能になります.
南港にある咲洲庁舎の閲覧コーナーには,色々な人がファイルをチェックしに来ます.
一番多いのが帝国データバンクや東京商工リサーチなどの調査会社.
次に多いのが同業の兼摂会社や行政書士になります.
閲覧の理由は,調査会社はデータ収集の為.
行政書士は依頼を受けた会社の下調べ.
同業者は取引先の調査やライバルチェックなど.
ファイルに綴じられた情報から色々な事が分かります.
会社の財務状況や工事経歴書で施工内容など.
決変や変更届の提出状況で,会社の事務能力やコンプラ意識など.
大手企業や金融機関,官公庁は,法令遵守がコストよりも優先される世界です.
そして自社の取引先にもコンプライアンスを求めます.
決算変更届を5期まとめて出す場合,5年分の手続きが必要です.
決変が1期分で大体30枚程度あります.
5年前の確定申告書や工事データや請求書のファイルを取り出して,財務諸表や工事経歴書を作成します.
5年分の工事データや決算書の数字を齟齬が出ない様に作成するのは骨の折れる作業です.
建設業許可をやり慣れた行政書士でも1期で数時間かかります.
普段作り慣れない方だと2倍から3倍は必要になることも.
真に厄介なのが,各種変更届です.
この書類は役員や営業所,専技や経管などの変更事項があった時に提出するものです.
これが細かい項目でも変更届が必要で当時の確認資料もセットで提出します.
ものによっては,書類を作成する前に別の手続きが必要なことも.
例えば取締役の任期が切れていた場合は,役員の重任登記が必要になります.
変更届が一つでも抜けると更新申請が出来ません.
窓口で変更漏れや書類不備を指摘されて,受理されずに帰ることに…
もう一つ,申請書類の印刷漏れやプリントミスにも注意が必要です.
複数年度の決変を出す場合,書類は数百枚からのオーダーになります.
上記の写真は,弊所が提出した5期分まとめての決算変更届と更新申請の書類になります.
だいたい国語辞典と同じくらいの分厚さです.
これだけの枚数なので,印刷漏れなどが発生することがあります.
(どれだけ気を付けていても出るときは出ます)
足りなかった時,役所の窓口で「1枚足りないよ」と指摘されます.
その場で作成できる書類であれば問題ないのですが…
すぐに作れない物だと,メールでPDFを送ってもらい近所にあるコンビニでプリント.
それが出来ない場合は,事務所に戻って再提出…
提出が期限ギリギリの場合,書類の作り直しが間に合わない可能性があります.
最悪は許可期限に間に合わず,期限切れで許可が失効してしまう危険があります.
一度失効した許可は復活させることは出来ません.
もう一度,建設業許可を新規で取り直すことになります.
許可が出るまでの間は500万円以上の工事が出来なくなります.
あと許可番号も変わります.
次に行政書士などの専門家に依頼する場合です.
この場合の依頼料は高額になりがちです.
5期分の決算変更届,各種変更届,更新許可申請と最低でも6種類の仕事があります.
期限が迫っていることも少なくないため,特急料金を請求される事も珍しくありません.
行政書士がボッタくりしてる訳では無いです.
5年分の費用が1回でまとめて発生したために高額に見えるだけです.
その代わり行政書士に依頼した場合は,精神的なプレッシャーからは解放されます.
(行政書士が代わりにプレッシャーを引き受けるため)
あと貴社に代わり担当官からのお叱りを受けてきます.
かなりキツイ言葉で行政指導されるので結構へこみます.
それでも行政書士に依頼できた場合は,基本的に許可更新はできます.
もしくは最初から新規許可を前提に動くこともあります.
(ご依頼者さまの了承を頂いてから)
お問い合わせを受けた段階で,どうしようもない場合はお断りする事になります.
弊所も心苦しいですが,お断りした案件がございます.
この様に決算変更届を5期まとめて出す行為には大きなリスクが伴います.
出来る限り決変や変更届は期限を守って提出することをお勧めします.
以上が5期まとめて決算変更届を出す時のリスクについてでした.
ここまでお読みいただきありがとうございます.
行政書士やまだ事務所 所長
行政書士 山田 和宏
日本行政書士会連合会 13262553号
大阪府行政書士会 6665号
大阪府行政書士会 法人研究会会員
申請取次行政書士(大阪出入国在留管理局長承認)
大阪商工会議所 建設・建材部所属
建設業経理士2級
【適格請求書発行事業者】
インボイス登録済
番号:T1810496599865
【専門分野】
建設業許可、経営事項審査、CCUS登録など建設関連の許認可手続き。
産業廃棄物収集運搬業、古物商免許。
年間相談件数は、500件を超える。
【運営サイト】