この記事は建設業許可と常用契約の関係について。
弊所に寄せられた問い合わせへの回答をコンテンツに作り直したものです。
結論から申し上げると、常用中心の会社だと建設業許可の取得は難しいです。
理由は常用工事が建設業法上で、工事の経験と認められないからです。
(常用と人工出しは工事というより労働契約に近い)
建設業許可には、常勤役員等と専任技術者で建設工事の実務経験が必要です。
実務経験の証明は、会社で建設工事の契約書や注文書で行います。
注文書に常用契約や人工出しなどの文言が入っていたものは使えないです。
(必要年数分の実務・経営経験の証明ができない)
また一人親方が常用で働くことはNGです。
(法令違反となる可能性が高い)
常用契約と建設業許可の関係をマンガにまとめたものです。
(完全なる自己満足の世界ですね)
建設業許可は請負工事に関する許可であることを書いてあります。
さらに許可業種ごとに工事の種類が列記されています。
建設業法第2条2項に建設工事の定義が記載。
この法律において「建設業」とは、元請、下請その他いかなる名義をもつてするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう。
建設業法第2条2項の条文が建設業許可で常用契約がダメな理由の根拠です。
ここから常用工事と請負工事の違いについて簡単にご説明します。
(正確な定義は民法にありますが、ここではザックリとした説明にとどめます。)
最大の違いは、納品物の違いです。
常用契約は労力を提供し、請負は結果を提供します。
建設業でいう請負契約とは、担当する工事の完成で報酬をもらう仕事です。
例えば塗装工事なら施主や取引先から、指定された建物に塗装する契約です。
内装工事であれば、家屋や店舗、オフィスの内装を作りあげます。
雇用と違い請け負った仕事に一定以上の裁量があります。
(仕事のやり方などに事細かく指示を受けない)
また仕事が完成しない場合や間に合わなかった場合は、発注者から損害賠償を請求されることもあります。
完成物を納品することが契約なので、仕事が早く完成した場合は別の現場の仕事をすることもできます。
(逆に終わらなければ、完成するまでやり続ける必要あり)
次に常用契約について。
契約で決まった場所と時間で作業をする仕事になります。
常用仕事は人工出しと呼ばれることもあります。
例えば大阪〇〇の現場で〇月〇日朝8時から夕方5時まで現場作業する。
または奈良の〇〇に〇月〇日に作業員を3人応援に出してほしいなど。
基本的に支払われるのは、人件費のみとなります。
計算方法は一人を一人工と呼び、一人工〇〇円。
注文書などには、〇〇の現場、3人工で〇〇円という感じになります。
常用契約での仕事は、建設工事というよりも雇用契約や派遣契約(建設業ではNG)に近いものです。
建設業で人工出しや常用工事をする会社は少なくありません。
また常用工事が多い会社も建設業許可が必要になる事が多いです。
元請け会社のコンプラ意識の高まりで、500万円以下でも許可が必要と言われるなど
そのような背景から、弊所にも問い合わせの電話が掛かって来ます。
常用メインのままだと、許可要件を満たすのは難しいです。
また許可が取れた場合、常用仕事から請負仕事に業態を変換させる必要もあります。
(常用のままだと、工事経歴書や直前3年など実績の数字が入っていかない。)
まずは専任技術者の要件ですが…
まずは社長や従業員の方が国家資格を取得する方法です。
(許可維持の観点からは社長が資格取得が望ましい)
もしくは技術者になれる人を他所から引っ張ってくる方法もあります。
専任技術者と常勤役員は出向社員でも可能で。実際に出向で対応している会社もあります。
もしくは実務経験の要件を満たすまで、請負工事の実績を積み上げる。
(許可取得まで時間がかかるけど確実)
次は常勤役員等についてです。
経管は建設業の経営経験でなれるポジションです。
経管の国家資格は存在しません。
なので他所から経験者を呼び寄せるか、請負工事の経験を5年間溜まるまで待つことになります。
注文書も契約書もない、貴方の所で良さげな注文書を作ってくれないか?
お問い合わせで時折、仰る方が出てきます。
大変申し訳ないのですが…
要件を満たしている風を装う為に、注文書などをお作りすることはございません。
無いものを有るとする行為は、虚偽申請につながります。
もし虚偽申請が発覚した場合、弊所も貴社にも大きなダメージをもたらします。
うまく許可が取れたとしても、何らかの事情で虚偽が発覚した場合・・・
(この手の不正は想定外の場所で発覚するものです)
一発で建設業許可の取り消しと5年間の許可取得が出来なくなります。
許可を前提に仕事が回っている段階で許可取り消しになれば、多くの関係者にご迷惑をおかけすることになります。
虚偽申請は多くの人を不幸にするリスクをはらんでいます。
絶対に注文書の偽造などは止めておきましょう。
以上が常用工事と建設業許可についてでした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。